フェルマーの最終定理入門1

ここから何回かに分けてワイルズ・テイラーの定理(ここではフェルマーの最終定理と呼ぶことにします)について紹介してみようと思います。とは言うもののこの定理は非常に難解なので、その入門部分についてのみ紹介したいと思います。

その前に簡単な参考文献を挙げておきます。

人気のテーマなのでWikipediaが充実しています。

Wikipedia:フェルマーの最終定理

Wikipedia : ワイルズによるフェルマーの最終定理の証明

英語版Wikipedia:Fermat Last Theorem

ネット上で読める解説記事:

フェルマーの最終定理とは?証明の論文の理解のために超わかりやすく解説!

証明に興味がある方は次の文献が日本語で読めます(但し"読破出来る"とは言いません)。

斎藤 穀, フェルマー予想, 岩波書店(2009).

類体論と非可換類体論 1 フェルマーの最終定理・佐藤-テイト予想解決への道

証明の原著は次の文献です。

Wiles, A (1995). "Modular elliptic curves and Fermat's Last Theorem". Annals of Mathematics (Annals of Mathematics) 141 (3): 443–551. doi:10.2307/2118559. JSTOR 2118559. OCLC 37032255.

Taylor R, Wiles A (1995). "Ring theoretic properties of certain Hecke algebras". Annals of Mathematics (Annals of Mathematics) 141 (3): 553–572. doi:10.2307/2118560. JSTOR 2118560. OCLC 37032255.

ということで、本日は導入を...

フェルマーの最終定理とは

『 次の方程式

$$x^n+y^n=z^n$$

は\(n>2\)のとき整数解を持たない。』

という定理です。当り前ですがフェルマー定理では除外される整数の組み合わせがあります。それが"自明な解"というもので

$$(0,0,0)$$

$$(\pm 1, 0, \pm1)$$

などの解です。

さてまずは肩慣らしとして\(n=1,2 \)のときを見てみましょう:

\(n=1\)のとき:

$$x+y=z$$

となるx,y,zの整数の組み合わせは無限にあります。

n=2のとき:

$$x^2+y^2=z^2$$

これは三平方の定理で直角三角形の辺の長さの関係を表す事が知られています。また\((x,y,z)=(3,4,5)\)などの非自明な整数解を持つことが知られています。このような整数の組はピタゴラス数と呼ばれています。

このピタゴラス数はどのくらい存在するのでしょうか?それに答えるために色を少し変形します。

この式は\(z\)を固定すると円を表す式となることに注目します。そこで式を

$$\big( \frac{x}{z} \big)^2+ \big( \frac{y}{z} \big)^2=1$$

と変形し

$$X^2+Y^2=1$$

の"有理数解"を求めるという問題に帰着します。2次方程式の有理数解を求めるという問題は一般にディオファントス問題と呼ばれています。

ではこの問題はどのように解いたらよいでしょうか?

2次方程式の解の公式より、2次方程式は2つの解を持ち、それらの解は"1つの解が有理数(即ち判別式が平方数)ならばもう1つの解も有理数"という性質を持ちます。これを利用することで円上の全ての"有理点"(\(x,y\)共に有理数となる点)を計算する事が出来るのです。

即ち、円、

$$X^2+Y^2=1$$

及び、円上の一つの有理点(例えば\((1,0)\))を通る傾き\(a\)の直線

$$Y=aX-1$$

の交点を求めればよいというわけです。このパラメータ\(a\)を変えていくことで円上の全ての有理点を見つけることができます。( 証明は難しくありませんが式の変形が大変なので割愛します 。簡単にいえば、パラメータ\(a \)が有理数ならば解も全て有理数であり、また、有理数解に対してはパラメータが有理数になるということを示せば完了です。)

この方法を応用すると全ての二次曲線上の有理数点は一つの有理点を見つけそこから引かれる直線と傾きパラメータにより全ての有理点が求められるということになります(!)

\(n=3\)以上のとき

これはどうなるでしょうか?

2次の議論を参考に有理数解を作っていきたいところですが、3次以上の方程式は1つの解が有理数であったとしても、その他の解が有理数になるとは限らないということです。ではこの問題をどのようにして扱っていけばよいのでしょうか?

これはまた次回に。次回は証明の流れを紹介したいと思います。

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