多様体超入門

今回は多様体に関する雑多なメモです。今回は位相空間からテンソル積まで。一応代数的視点を重要視する立場で書いてみています。

・位相空間\((X,\mathcal{O})\):集合から空間へ

定義

(点)集合\(X\)+部分集合族\(\mathcal{O}\)+代数構造(*)

代数構造(*):

$$\cup:\mathcal{O}\rightarrow \mathcal{O} は無限回演算で閉じる(単位元は\emptyset)$$

$$\cap:\mathcal{O}\rightarrow \mathcal{O} は有限回演算で閉じる(単位元はX)$$

ここで\(\mathcal{O}\)の元を\(X\)の開集合と呼ぶ。

連続写像

位相空間の圏\(\mathcal{Top}\)の射であり

$$F : X \rightarrow Y$$

に対して、\(Y\)の開集合(\(\mathcal{O}_Y\)の元)を\(X\)の開集合(\(\mathcal{O}_X\)の元)に送る。

特に全単射連続写像を同相写像と呼び同相写像が存在する位相空間のペアは同相と呼ばれる(\(X\sim Y\)などと表す)。同相写像は\(\mathcal{Top}\)の同型射である。

キーワード:

位相空間は(点)集合の各点の繋がり具合を定義する、といった解釈を持つ。しかし、各点の距離を定義する事はなく、その繋がりにのみ注目する。位相空間で登場するキーワードには以下の様なものがある:

  • 位相の強弱
    • どの程度点を区別するか、という設定
  • 分離性
    • 点の区別の別な見方。位相の強弱との関係は?
  • 連結性
    • 空間が"繋がっている"度合い
  • コンパクト性
    • 微分方程式を解いたり解析接続をする際に"つないで行ける事を保証"
  • 収束とフィルター
    • 集合演算ルール
  • ファイバー
    • 位相空間上の構造F→局所的に直積X×Fとなる

Ref.

http://ja.wikipedia.org/wiki/位相空間

松坂和夫:集合・位相入門

・位相多様体\(((M,\mathcal{O}), {U, \psi})\):地図の書ける空間へ

定義

位相空間\((M,\mathcal{O})\)に対し、その開被覆(開集合の族で、その和集合が\(M\)となる)\(\{U\}\)が存在して、\(U\)から\(\mathbb{R}^m\)への同相写像\(\psi_U:U\rightarrow \mathbb{R}^m\)(\(U\)の局所座標と呼ぶ)が存在するとき、\(((M,\mathcal{O}), {U, \psi})\)を\(m\)次元位相多様体と呼ぶ(実は第二可算公理+ハウスドルフ性を仮定)。特に\(\{U\}\)に含まれる開集合(局所座標を持つ開集合)を座標近傍と呼ぶ。

位相多様体の写像\(F:M\rightarrow N\)はしばしばユークリッド空間の写像\(F_E : \mathbb{R}^m \rightarrow \mathbb{R}^n \)を通じて行われる。即ち、\(U\)を\(M\)の座標近傍、\(V\)を\(N\)の座標近傍とするとき、\(F_E:\psi^M_U(U)\rightarrow \psi^N_V(V)\)は

$$F_E |_U = \psi^N_V \circ F \circ \psi^M_U$$

と定義するのである。

・微分可能多様体:微分の出来る多様体へ

定義

2つの座標近傍\(U,V\)が空でない共通部分を持つとき、座標変換

ψ_U (U∧V)  →ψ_U^-1 U∧V

↓ ψ_V◦ψ_U^-1    ↓ 

ψ_V (U∧V)  ←ψ_V   U∧V

\(\psi_V\circ \psi_U^-1\)が存在する。多様体上の写像を行うとき写像の値は座標の取り方には依らない。しかしその微分を考えると座標変換によってその可微分性が異なる。

従って多様体上の量の微分を考えたければ座標変換\(\psi_V\circ \psi_U^-1\)が可微分である必要がある。座標変換が可微分であるとき位相多様体を可微分多様体と呼ぶ。(各座標変換が\(C^r\)級であるとし、\(r\)の最小値を用いて\(C^r\)級可微分多様体と名前がつく。以降簡単の為\(r=∞\)とする。)

可微分写像

可微分多様体M,Nに対し、写像Fが可微分写像であるとは

ψ_U (U)  →ψ_U^-1   U  on M

↓ φ_F(U)◦F◦ψ_U^-1  ↓ F 

φ_F(U) (F(U))  ←ψ_F(U) F(U)  on N

φ_F(U)◦F◦ψ_U^-1がC^∞である事とする。(厳密には、U上の点pを送ってF(p)を含むNの開集合(F(p)の開近傍)を使って定義するが、ほぼ同義。)

可微分写像は可微分多様体のなす圏\(\mathcal{Diff}\)の射であり、同型射は微分同相写像、つまり、可微分な全単射、そして逆も可微分な全単射写像となる写像である(ちなみに可微分性を忘れれば(忘却函手)これが位相多様体の同型射となる)。

Ref.

http://www.math.sci.hiroshima-u.ac.jp/~tamaru/files/09kika-a.pdf

・層:位相空間Xの層Sとは、Xの構造であり、定義領域を縮小してもその性質が保たれるものを言う。これは、Xの上の局所的な構造を議論するのに有用である。

位相空間(X,O)に対して、位相空間Xの圏Oとは、対象を開集合とし、開集合U,V間の射ρを

if U ⊂ V then ρ : U → V (Embedded), else f is undefined.

により定義する。位相空間の前層Sとは、位相空間Xの圏Oから適当な圏A(一般的にアーベル圏)への反変函手のことである。(但し、以降集合とその元を用いて議論すべく、集合の言葉で記述する。)

更に前層から層を定義するには前層の上の同値関係を定義する必要がある。

即ち、前層Aの元は、一点x∈Xの開近傍全体をとってきて、共通部分を持つ開近傍から共通部分に含まれる開近傍への縮小写像ρをとった時に、一致するものを同値みなす。(最終的には一点で同じものを同じと見なすと言う事である。)この同値類で割った空間(これを帰納極限と呼ぶ。)を点xにおける前層Sの茎S_xと呼び、茎の元(層は各点に集合を対応させるので、茎は元を持つ)を芽と呼ぶ。

すべて点xの前層Sの茎S_xの和集合を位相空間Xの層と呼ぶ。(層にはXへの射影が存在する。射影を忘れる事で、層は前層になる。)

Ref.

http://ja.wikipedia.org/wiki/層_(数学)

・接空間、余接空間:多様体上に自然に備わるベクトル空間(速度ベクトル空間と積分測度)。

接空間:多様体の各点を通る可微分曲線全体の集合をとり、その速度ベクトルの集合(これは層を成す)を考える。1点のベクトルの集合(層の茎)はベクトル空間を成す。このベクトル空間を各点の接ベクトル空間と呼ぶ。速度ベクトルの局所座標表示から基底を微分作用素(方向微分)にとる事が出来る。結果このベクトル空間は方向微分の成すベクトル空間と見做す事が出来る。

このベクトル空間は位相空間であり座標変換(座標変換は群を成す。これを構造群と呼ぶ。)を持つ。従ってこれをファイバーと見なすファイバーバンドルが定義出来る(つまり、層よりも特殊な対象と見なせる。)これを接バンドルと呼ぶ。

接空間が与えられるとベクトル場(接バンドルの切断)を与える事が出来る。ベクトル場は積分曲線を与え、積分曲線は多様体の運動(1パラメータ変換)を与える。1パラメータ変換は群を成し、これはリー群になる。

微分写像:可微分多様体X,Yの間の射(可微分写像)は、その上の接空間の線型写像を誘発する。但し、その向きは逆になる。つまり、可微分多様体から接バンドルの函手は反変函手である。

余接空間:1パラメータ変換群の作用に依り多様体上の関数は変化する。この変化を記述するのはリー微分(厳密な意味で多様体上の方向微分に対応するもの)と呼ばれる。微分が与えられれば、それは関数の微小変化を定義出来る。変化量の空間はやはりベクトル空間を成す。これを余接空間と呼ぶ。

これは後述するように積分測度としての役割も持つ(未完)。

Ref.

・テンソル代数と外積代数(未完):ベクトル空間に作られる単純で普遍的な代数構造。

R-加群(Rは環。Rが体のときR-加群はベクトル空間となる。)Vに対し、V上のテンソル積(×)は双線型写像である。つまり

(×) : V×V → V(×)V

がそれぞれのVに対し線型に振る舞う事を意味する。

ただしこの演算は"閉じていない"。更にテンソル積は繰り返す事が出来る(繰り返しに対し結合的である事を仮定する)。

(×) : V(×)V×V → V(×)V(×)V

そこで全ての次数(Vにテンソル積をn回施して得られる空間をn次のテンソル空間と呼ぶ。)のテンソル空間の直和をとってくる。するとその上ではテンソル積が閉じる事が分かる。即ち

(×)V := (+)_{n=0}^{∞} V^{(×)n}

は線形空間であり、テンソル積について閉じている。(×)Vをテンソル代数と呼ぶ。

Ref.

http://hooktail.sub.jp/vectoranalysis/TensorAlgebra/

http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20070809/1186622706

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